課題演習D2レポート(阿蘇地震観測と解析)

0500-13-0484 岡上雄介

実習の目的

阿蘇山周辺では、周期15秒(周波数0.06〜0.07Hz程度)を基本周期とする長周期微動があることが知られている。
今回の実習では、その微動の観測及び震源の推定を行った。

実習の方法

地震計を、阿蘇山火口周辺の四ヶ所に設置した。(下図)

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各地震計は、E-W・N-S・U-Dの三成分を記録するようになっている。
そのデータに、上記の周波数成分を抜き出すバンドパスフィルターをかけて、揺れの方向を調べる。
(理論上は)最低二点の地震計のデータで、震源の東経・北緯・深さが分かることになる。

データとして、2003年7月31日23時20分から10分間のデータを利用した。

  1. まず、観測された生データをFFTでフーリエ変換し、周波数の特性をみる。(下図)

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    このデータは、C地点のU-D成分の振幅スペクトルの図である。
    この図からも分かるように、確かに周波数0.06〜0.08Hz程度のところにピークがあるのが確認できる。

  2. 上の結果をみて、ピークの部分を残すようにバンドパスフィルターをかける。
    実際には、周波数の関数となった地震波のデータに、

    1. 周波数 〜f1:data=data x 0
    2. 周波数 f1〜f2:data=data x cos^2[(π/2) x {(f-f2)/(f2-f1)}]
    3. 周波数 f2〜f3:data=data x 1
    4. 周波数 f3〜f4:data=data x cos^2[(π/2) x {(f-f3)/(f4-f3)}]
    5. 周波数 f4〜:data=data x 0

    というフィルターをかける。f1〜f4の各周波数には、
    f1=0.03Hz
    f2=0.05Hz
    f3=0.08Hz
    f4=0.10Hz
    という数値を使用した。

  3. 次に、フィルターをかけた周波数データをFFTで逆フーリエ変換する。

    以下が、フィルターをかけた後の地震波のデータである。(クリックで拡大)
    横軸は時間であり、縦軸は各成分ごとの揺れの大きさを表している。

    EW成分 NS成分 UD成分
    A地点
    B地点
    C地点
    D地点

    そして以下が、x軸:y軸にそれぞれ、EW:NS・EW:UD・NS:UDの成分の揺れをプロットした図である。(クリックで拡大)
    これらの図は、各平面内で地面が実際にどのように揺れたかを表す。

    EW-NS成分 EW-UD成分 NS-UD成分
    A地点
    B地点
    C地点
    D地点

震源位置の推定

D地点は、地面が柔らかかったため適切なデータが得られていないので、推定には使用しない。

  1. まず、震源の北緯と東経を求める。
    上の振動図のうちEW-NS成分を見て、A〜Cの地点の水平成分の揺れの傾きを調べる。

    1. 50°
    2. 114°
    3. 172°

    それぞれ上の角度だけEW方向から傾いており、それらを地図上に描いてみると以下のようになる。

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    線が交わっている、図のa、b、c三点の北緯・東経を求め、その重心をとった地点(Gとする)の真下に震源があるとする。
    さて、

    1. 北緯32度53分24.3秒 東経131度05分29.2秒 標高1284m
    2. 北緯32度53分23.5秒 東経131度04分37.3秒 標高1134m
    3. 北緯32度52分58.8秒 東経131度04分33.8秒 標高1158m

    であるので、先ほどの角度のtanを傾きにすれば、三つの連立一次方程式を解くことにより、
    容易にa、b、c三点の北緯と東経が求まる。

    1. 北緯32度52分56.64秒 東経131度04分49.24秒
    2. 北緯32度52分54.54秒 東経131度05分4.20秒
    3. 北緯32度52分43.18秒 東経131度04分54.65秒

    これにより、Gの(つまり震源の)北緯と東経は、

    1. 北緯32度52分51.45秒 東経131度04分56.03秒

    となる。これは、第一火口から南西へ約400mの地点である。(図参照)
    また、地図の等高線より、G点の高度は約1250mであるとわかる。

  2. 次に、震源の深さを調べるためにEW-UD平面を考える。
    B地点のUD成分はデータがおかしいようだ、とのことなので使用しない。

    下の図のように、Gから鉛直下方に引いた線と、A・CのEW-UD図の傾きを表した線が交わる2点d、eの深さを求め、
    その平均を震源とする。図はEW-UD平面である。

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    今回、直線Adが水平方向となす角度は52°、直線Ceが水平方向となす角度は59°である。
    また、A・CとGとの東西方向の距離x・yは、地球の大円が40,074kmであるとすると、東経の差より計算でき、
    x=0.579km、y=1.026kmである。

    よって、図よりd、eそれぞれのGからの深さはtanの関係を使って容易に求められ、

    1. 1278m
    2. 1103m

    となる。この平均をとって、震源の深さは1190m、つまり約1.2kmであると推定できる。

考察

  1. 推定した位置の不確かさとして考えられること

    これには、いくつかの原因が考えられる。

    1. 地震計を北に合わせるとき、方位磁針から「目で」ロープを北に合わせ、
      そのロープを使ってさらに1メートル程度はなれた地震計の北と「目で」合わせた。
      明らかに誤差が大きいはずで、その誤差が数km離れた震源の推定位置を大きく狂わせるということはあり得る。

    2. 今回グラフから角度を読み取ることが多かったが、それらはすべて手作業によるものである。
      角度はすべてtanとして使用されるため、少しの角度のズレが大きな変化として出る場合がある。
      そのため、震源の北緯・東経や深さの推定に不確かさが出ていると思う。

  2. どのようなことが分かったか

    阿蘇では、確かに周期15秒程度の長周期微動が起こっている。
    その微動は、第一火口の直下ではなく、南西へ400mほどズレた地点で起こっているらしい。
    また、震源から地震波が直進していると考えた場合、その震源の深さは約1.2kmである。

  3. 何が原因で長周期微動が起きているのか

    火口付近で長周期微動が観測されるということは、火山活動が原因であると思われる。
    火口付近の地下では熱が上昇してきているはずなので、その熱が地下1.2km程度の部分にある空洞とか水たまりとか周りと組成の違う岩帯とか、なにかその様なものを伸縮させているのではないかと思う。

  4. どのような観測をすればよいか

    もし上記の通りだとして、それを確認するための方法だが、震源が約1.2kmと比較的深いため何らかの物理探査をしなくてはならないと思う。今回の解析で震源の北緯・東経がほぼ求められたので、その点を通過する直線上で地上から人工的に地震波を送り出し、その反射波を観測して地下の様子を探る反射法探査などを利用すれば、地下で何が起こっているかもっと詳しく分かるのではないだろうか。