地震波の波線を計算する
【もしも余裕があったならば】
【ステップ2】で用いた距離X、走時Tの計算式についている2倍は、
各層を行きと帰りで2度通過するからです。
このことを考えると、波線が下向きに伝わってk番目の層の底に地震波が
到達するときの水平距離と、上向きに転じて、波線が上向きに伝わって
k番目の層の上端に地震波が到達するときの水平距離、は
各々以下のような式で計算できます。


この計算式を使って、
地震波の波線が地中を通過していった位置を計算することができます。
速度構造1をもちいて、入射角34度のときの地震波の波線の位置を
計算してみましょう。
速度構造1の走時を計算したときに使ったシートを、
新しいシートにコピーします。
これは、「ホーム」タブの「書式」「シートの移動またはコピー」
でできます。コピーしたシートで、入射角34度以外の列を削除してしまいます。

下の方の列で、地震波の波線のない#NUM!の表示されている層を削除します。

表の終わりに、地震波の波線が、地表まで上向きに伝わってくる部分
を計算するための行を追加しましょう。
まず、地震波の波線のある一番下の層(ここでは319行目)の下に、
1層目からそこまでの層(ここでは4行目から319行目まで)を
コピーします。これは、4行目から319行目までを選択して、
「コピー」としたあと、320行目の第1列のコラムを選択して、
「張り付け」でできます。

それから、「並べ替えとフィルター」の「降順」を用いて、
320行目以下の層を逆の順序に並び替えます。
つまり、深い方から浅い方へ(列Aの値の大きい方から小さい方へ)です。
こうすることにより、地震波が波線のあるもっとも深い層から地表まで
戻ってくる間に通過する層を、通過する順序に並べたことになります。

下が並べ替えたあと。
できた表は、地表から地震波の波線が地表に戻ってくるまでに
通過した層の順序になっています。

E列に、各層を通過するときに伝わる水平距離を計算しましょう。
上の第1式のシグマの中の部分を計算することになります。

同じ計算を、地震波が下向きに伝わっているところまで行います。

各層を通過した時に、そこまでに進んだ水平距離の合計を列Fに計算します。
これは、そこの層までの各水平距離の和です。
この値が、各層の下端に波線があるときの
(震源を原点とした)水平位置になります。
F5に以下の式をいれます。足し算を開始するのはいつもe4なので絶対参照$e$4に
なっています。足し算を終えるコラムは、各行で変わるので、e5にしてあります。

同じ計算を、地震波が下向きに伝わっているところまで行います。
式が計算したいものになっているか、確認してください。

今度は、地震波の波線が、最深層から地表に戻ってくる部分を計算します。
まず、各層を通過するときにすすむ水平距離をE列に計算します。
これは、上の第2式第2項のシグマの中身にあたります。

最深層の上端に波線があるときの、水平距離を計算します。
これは最深層の下端に達したときの水平距離(F319)に、
最深層を通過したときにすすむ水平距離(e320)をたします。
結果は、F列にいれていきます。

あとの上の層は、
最深層の下端に達したときの水平距離(F319)
(これが上の第2式第1項にあたります)に、
波線が上向きになってから該当する層の上端に達するまでにすすんだ水平距離を
たしあわせればよいことになります。結果はF列にいれます。
同じ計算を地上に戻るまで行います。

これで、水平距離の計算は終わりです。図を作るために、深さ方向の情報を
与える列を作りましょう。
F列には、各層を通過しおえた時の震源からの水平距離がはいっています。
各層を通過しおえたときの深さを、G列に与えていきましょう。
波線が下向きの時には、その層の下端になります。従って、A列の値に
層の厚さ0.5kmをたします。

波線が上向きの時には、その層の上端になります。従って、A列の値
そのままをG列にいれましょう。

実は、最初のスタートの水平距離と深さの情報が抜けています。
そこで、depth 0kmの行の上に、新たに行を挿入して、
F列、G列にゼロをいれます。
それから、F5も抜けていましたね。これは最初の層を
通過した時の距離なので、E5の値をそのままいれておきます。

これで、完成です。あとは、F列にある水平距離を横軸に、
G列にある深さを縦軸にしてプロットします。
F列とG列を選択したあと、
「散布図」のうちのデータを線で結ぶもので描いたものが下です。
(深さを下向きにする方法を
忘れた人は前々回を参照のこと)
地表をでた波線がなめらかなカーブを描いて、
まず下向きにすすみ、途中で上向きに転じて、地表に
もどってくるようすがみえます。

速度構造3を使って、
同じ入射角34度のときの波線を上と同様に計算してください。
速度構造3の場合、地中の中を
通過していく波線の位置が速度構造1とどのように違うかをみてください。
また、速度構造2の場合で、特徴的な走時曲線がでる距離よりも
近いところへ伝わる波線と遠いところへ伝わる波線が、
どう違うのかをみてみてください。