夏の観測実習で火山センターに広帯域地震計を設置したあと、 チリでマグニチュード8.3の地震が発生しました。 その地震から伝わってきた大きな振幅の表面波が 記録されるようすは、実習中にも見ました(下の写真)。
これほど規模の大きな地震に実習中に出会うことはめったにないので、 モデリング編の時間ではありますが、 このチリの地震の表面波を調べてみることにしました。
今回は、地球をグルグル回って伝わる表面波のうちのレイリー波を使って、 チリの地震の断層運動の継続時間(source process time)を推定することに チャレンジします。
左図:赤星印が阿蘇の火山センター、黄星印がチリの地震の震央。
実習中に発生したチリの地震の震源の位置と震源時は、
アメリカ地質調査所(USGS)
http://earthquake.usgs.gov/によると、
2015年9月16日22時54分32.86秒(世界標準時;日本時間はこれに+9時間)
南緯 31.5729° 西経 71.6744° 深さ 22.44km
です。
コロンビア大学
http://www.globalcmt.org/によると、
地震モーメント(Mo) は 2.86e21 Nm(Mw8.2相当)で、
走向が方位5°(北から東へ)、傾斜角が22°、すべり角が106°と、
緩やかに東へ傾く低角逆断層の地震です。
この地域では、 西側の太平洋にあるナスカプレートが、東側の南アメリカプレートの下へ 沈み込んでいます。 今回の地震は、そのプレート境界で起こった地震と考えられます。 この地震の南には、 2010年M8.8Maule地震の震源域があります。 更に南には、世界最大M9.5の1960年チリ地震の震源域があります。 チリの太平洋側の海岸線に沿っては、 このような巨大地震を含む多くの地震が発生します。
左図:赤点は1976年から2014年までに起こった深さ60kmより浅い地震の震源(Mo>1.0e18Nm)。
広帯域地震計をおいた阿蘇の火山センターは、今回の地震から見ると、
方位 北から西へ80.1°
震央距離 160.8°
に位置します。
レイリー波R1,R2,R3の各地震計データを、 高速フーリエ変換FFTで周波数領域へ変換し 地震計の応答関数を取り除いて位相の値を求めます。 この3つの位相の値を使って、 地震の継続時間を計算します。
世界に伝播するレイリー波R1,R2,R3のようすをみて、
そのタイミングを見ます。
※レイリー波とは?R1,R2,R3とは?ココ
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火山センターの広帯域地震計データについてR1,R2,R3を含むデータファイルをつくり、
どこにR1,R2,R3がきているかをみて、R1,R2,R3に使うデータ期間を各々決めます。
プログラムで扱いやすくするためにデータの下準備をします。
これには、SACの簡単な使い方を知る、データのサンプリング間隔を落とす、
アスキーに変換するなどが含まれます。
※初回演習時(10月5日)のメモはココ
※具体的な作業のためのメモはココ
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データファイルから
データ期間が与えれたR1,R2,R3を切り出しFFTでフーリエ変換するプログラムをつくります。
更に、フーリエ変換した後、地震計の応答関数を取り除き、
その結果から位相を計算できるようにします。
最後に、各周波数で、3つの位相の値から地震の継続時間を計算できるようにします。
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FFTのサブルーチンのありかと使い方はココ
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地震計の応答関数の計算と除去の仕方はココ
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継続時間が算出できる仕組と式はココ
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得られた継続時間の値を周波数に対してプロットしてみましょう。
(12/16削除)
周期200~300秒を含む範囲で周波数に対する継続時間の推定値をみてみましょう(12/16追加)。
周期200~300秒の範囲の継続時間の推定値の平均値と標準偏差を計算してみましょう(12/16追加)。
その値を、これまでの過去の地震で得られている地震モーメントと継続時間の結果と
比較してみましょう。
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考察を加えて、レポート(MSwordあるいはpdf)にまとめてメールで提出です。
メールの件名を「DCレポート」にして久家宛へ送ってください。
レポート内に名前を忘れずにいれてください。
使用したR1,R2,R3の範囲もいれてください(12/16追加)。